雇用契約書って必要?労働条件通知書との違いは?社員を雇用するときにおさえておきたい手続きを解説!

雇用契約書って必要?労働条件通知書との違いは?社員を雇用するときにおさえておきたい手続きを解説! 人事の知識

「雇用契約書」と聞いて、それがどのような書面かを想像できる人は多いでしょう。企業が従業員を雇用する際に作成し、企業と従業員とで雇用契約を結ぶための書面です。多くの企業で雇用契約書を作成しているため、入社時にはそれが必要と考えている人は多いと思います。しかし、実は、法律上、雇用契約書を用意することは義務ではありません。一方で作成を義務付けている「労働条件通知書」というものもあります。そこで今回は、雇用契約書の必要性や取り扱いを、労働条件通知書との違いも含め解説していきます。

そもそも雇用契約って?

そもそも雇用契約とは、「労働者(従業員)が使用者(企業)の労働に従事すること、またそれに対し、使用者(企業)が労働者(従業員)の労働に対して報酬を支払うことを約束する契約」のことを言います。

雇用契約を締結した場合、労働者(従業員)は、労働保険や社会保険への加入や労働時間の管理や有給休暇の取得、また使用者(企業)からの一方的な解雇の禁止など、労働基準法をはじめとした労働法の下、保護される立場になります。

労働基準法

労働基準法では、使用者は労働者に対し下記の保護を与えることを義務付けています。これは、正社員だけではなく、契約社員やアルバイト、パート社員であっても一定の条件がある場合もありますが、扱いは同じです。

  • 労働保険(雇用保険、労働災害保険)や社会保険(厚生年金、健康保険)の加入
  • 年次有給休暇の取得
  • 残業代の規制
  • 雇用条件の不利益変更の禁止
  • 解雇権濫用法理

雇用契約書とは?

雇用契約とは、「労働者(従業員)が使用者(企業)の労働に従事すること、またそれに対し、使用者(企業)が労働者(従業員)の労働に対して報酬を支払うことを約束する契約」のことと前述しましたが、その労働者と使用者との間で雇用契約の内容について合意がなされたことを証明するものが雇用契約書になります。

雇用契約書の作成は義務ではない?

ここで意外なのが、雇用契約書の発行は企業の義務にはなっていないのです。民法第623条では契約だけでその効力が発揮されることになっており、雇用契約書の発行を義務とし発行しなかった場合は罰則とする規定はないのです。しかし一方で、労働契約法では、「労働者と使用者は労働契約の内容についてできる限り、書面により確認するものとする」と定めており、企業側には「書面を作成することが望ましい」と推奨しています。

労働条件通知書との違いは?

一方、雇用契約書に類似する書面として「労働条件通知書」というものがあります。労働基準法では、「入社時に労働条件について書面で明らかにしなければならない」と定められており、労働条件通知書の発行は義務になています。万一、労働条件が、書面で明示されていなかったり、労働基準法の定めを下回る条件を提示していた場合は、30万円以下の罰金が科せられます。なお、労働条件通知書には指定の様式はありませんが、厚生労働省のホームページでは、労働条件通知書のひな形を公開しているためそれを見本にしてみてください。

結局雇用契約書は必要なの?

前述したとおり、雇用契約書を発行する義務はなく、発行しなかったとしても、労働条件通知書にて明示しておけば、義務違反として罰せられることはありません。しかし、労働条件通知書は、一方的に企業から社員に通知されるものであるため、相互で労働条件の認識が異なっていてトラブルになる可能性は避けられません。そのリスクを考えると、しっかりと、雇用契約の内容について合意がなされたことを証明する雇用契約書を取り交わしておくのがいいでしょう。企業によっては労働条件通知書と雇用契約書の両方を発行するところもあれば、「労働条件通知書兼雇用契約書」として一つにまとめるところもあります。いずれも、「この形でないといけない」という決まりはありませんので、各企業の管理体制、リスクやルールなどを考慮してベストな形をとるといいでしょう。

雇用契約書には何を書けばいいの?

雇用契約書の記載内容は、労働条件通知書とほぼ同じで、契約期間や就業場所、業務内容や賃金等の労働条件を明記します。また、労働条件には、必ず明示しなければならない「絶対的明示事項」と、当該事項に関する定めがあれば明示を要する事項「相対的明示事項」があります。前者は必ず書面での明示が必要で、後者は口頭での明示でも可とされています。(労働基準法第15条)

絶対的明示事項:書面での明示が必須

雇用契約期間

有期社員、つまり雇用契約期間の定めがある雇用契約の場合は、定められた期間、また更新の有無(次回更新するかどうか)、更新の判断基準を明示する必要があります。無期社員、つまり期間の定めがない雇用契約の場合は、「期間の定めはない」と記載します。

就業場所、従事する業務内容

就業場所については、雇用契約開始時に就業する場所を記載しますが、将来的に異動や出向などの可能性がある場合は、その旨も記載するようにします。また、従事する業務については、詳細に記載する必要はありませんが、事務、営業、エンジニア等、職種別に文言を決めておくといいでしょう。また、管理監督者なのかそうでないかも判別できるようにしておくとベストです。

始業・終業時刻、休憩時間、所定労働時間を超える労働の有無、休日、休暇、交代制勤務をさせる場合は就業時転換に関する事項

その社員に適用する始業・終業時刻および休憩時間だけではなく、変形労働時間制やフレックスタイム制、またシフト勤務などの勤務体制も記載します。固定シフトではない、変動的なシフト勤務などの場合は、いつまでにシフトが決定するか等のルールも記載しておくといいでしょう。また、所定労働時間を超える労働の有無は忘れられがちですが、絶対的明示事項としてしっかりと明記するようにしましょう。

賃金額、計算および計算期間、支払い方法、支払い時期

月給・日給・時給などの賃金の計算方法や、いつからいつまでの期間の賃金をいつ払うのか、また「手渡し」なのか「口座振り込み」なのか、という賃金に関する内容を記載します。

退職・解雇に関する事項

どのような場合に退職・解雇となるのか、条件や手続きなどについて社内規程を基に細かく明記しておきましょう。

相対的明示事項:口頭での明示でも可

昇給に関する事項

昇給がある場合はその旨と、時期も記載しておきましょう。

退職金に関する事項

退職金がある場合は、適用される労働者の範囲や、退職金の計算方法や支払い方法、支払い時期を記載します。

臨時で支払われる賃金や賞与などに関する事項

臨時の賃金や賞与がある場合は、その条件や支払い時期を記載します。

労働者に負担させる食費・作業用品その他に関する事項

制服や作業服等を導入している企業は、そのクリーニングやメンテナンスの補助手当てがあるのか、企業負担と社員負担の具体的な金額を記載します。「その他」とは社宅費や共済組合費などが該当します。

安全衛生に関する事項

労働安全衛生法などに規定されている事項のうち、企業において特に必要な事項、また法令に規定されていない事項であっても、企業の安全衛生上必要な事項を記載します。

職業訓練に関する事項

職業訓練の種類や内容、期間、また訓練を受けることのできる条件などを記載します。

災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項

災害補償の内容や、業務外で負傷や病気をした場合の扶助に関する事項を記載します。

表彰、制裁に関する事項

表彰とは勤続表彰などがあげられます。また、制裁については、懲戒処分の事由や種類、手続きなどを記載します。

休職に関する事項

産休や育休、また私傷病などで休職する場合の条件や期間、また期間中の賃金などの取り扱いや手続きなどについて記載します。

その他

様々な従業員クラスがある企業は、各従業員クラスに合わせて規程の定めがあるかと思います。その場合は、その社員がその規定を適用するかも明記しておくと良いでしょう。

また、忘れてはいけないのが、企業と社員の「署名捺印」欄です。署名捺印欄がない場合は、雇用契約の内容について合意がなされたことを証明として効力を発揮しません。後々「こんな契約内容は聞いていない」などのトラブルが起こらないよう、しっかりと各事項について説明し、サインを取り付けるようにしましょう。決まったやり方はありませんが、雇用契約書の2部発行して両方にサインをし、1部は社員控え、もう1部は企業控えとして保管しておくのがいいでしょう。

どんな時に雇用契約って結ぶの?

雇用契約を結ぶケースとして、新たに社員を採用し雇用するとき、または、雇用期間の定めのある有期社員を、契約期間が満了したためにその契約を更新するときなどが挙げられます。

入社時

ある者の採用が決定した際には、内定通知を本人にすることになりますが、本人から入社の意思が確認できたら、労働条件の検討に入りましょう。選考途中で進めるのでも問題ありません。また、面接途中で労働条件の交渉があった場合にはそれも考慮したうえで労働条件を決めていきましょう。必ず相手の要望にあわせる必要はありませんが、優秀な人材としてほしい場合は、少し好条件をつけるのも手法の一つです。ただ、他の社員との公平性や社内規則で定めるルールに基づき、適正な労働条件を決めることが大切です。労働条件が決まったら、雇用契約書に明示して本人にその内容を説明しましょう。場合によってはここで労働条件の交渉がされるかもしれません。その後は、本人の合意を得た証拠として雇用契約書にサインをしてもらいます。なお、ここまでの対応は入社前にしておくようにしましょう。

有期社員の雇用契約更新時

雇用期間の定めのない無期社員の場合は、基本的に入社時の雇用契約書にて雇用契約の締結が完了すれば、その後新たに雇用契約書を発行することはありません。(ただし、職種の変更や労働条件の変更などが発生した場合は雇用契約書でなくとも、書面にて明示して本人の合意を得ることが望ましいです)一方、雇用期間の定めのある有期社員の場合は、契約期間が満了する前に、雇用契約を更新するかの判断をし、する場合は雇用契約の再締結の手続き、しない場合は退職の手続きを進める必要があります。更新する場合は現雇用契約期間満了前に新たな雇用契約の労働条件を決め、入社時の雇用契約書同様、新雇用契約が開始する前に雇用契約書にサインをしてもらいましょう。なお、契約を更新しない場合は、あらかじめ定めいていた更新条件の何に当てはまらなかったのか明確にして、後々「不合理に解雇された」とトラブルにならないようにしておきましょう。

学ぶ人事
学ぶ人事

有期社員は有期労働契約が通算5年を超えた場合、無期転換申込権が発生し、本人の申し込みにより、無期雇用契約に転換することが可能となっています。この場合、企業側の無期転換への拒否権はなく、本人の申し込みがあった時点で無期転換が決定し、現有期雇用契約の終了はできなくなります。

雇用契約は電子で明示し締結することが可能

以前は雇用契約書の電子化が認められなかったものの、2019年4月から法律で電子化が認められたため、現在では電子で雇用契約を明示し、締結することが可能となっています。

ただし、電子化するためには下記3つの条件を満たしている必要があります。

  • 労働者自身が電子契約を希望していること
  • 本人だけが書類を閲覧できる状態にあること
  • 労働者が書類を紙で出力できること

また、社員本人のサインが必要な雇用契約書においては、本人しか署名できない電子署名を付与して、雇用契約の内容について合意がなされたことを証明できるものとする必要があります。最近ではペーパレス化の流れで、電子署名のシステムサービスが多く開発されているので話を聞いてみるといいでしょう。雇用契約書をペーパレス化することで、郵送コストや、雇用契約締結までの時間短縮、電子上の保管管理が可能等、あらゆるメリットがありますので導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

以上のように、雇用契約書は企業と社員との間での労働条件に関する認識祖語やトラブルが起こらないために重要なツールとなります。また、ただ雇用契約書を発行すればいいわけではなく、各社員の雇用形態に合わせて何を明示すべきかをしっかりと把握しておかなければ雇用契約書としての効力を十分に発揮させることができないので、時には法務や弁護士などの専門家のアドバイスを受けながら、自社に合った雇用契約書を作っていくといいでしょう。また、既に雇用契約書を作成している企業でも、雇用契約書の実務担当者と社員本人の業務の効率化のために、ペーパーレス化も視野に入れて改善をしていくといいでしょう。

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